東京地方裁判所 昭和43年(特わ)364号 判決 1969年1月30日
本店所在地
東京都中央区日本橋蠣殼町一丁目一七番地
カネツ商事株式会社
(右代表者代表取締役 清水正紀)
本籍
東京都葛飾区東新小岩一丁目五八六番地
住居
同都大田区田園調布六丁目一〇番三号
カネツ商事株式会社代表取締役
清水正紀
大正四年九月二二日生
右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官屋敷哲郎出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告カネツ商事株式会社を罰金七〇〇万円に、被告人清水正紀を罰金一〇〇万円に各処する。
被告人清水正紀において右罰金を完納しないときは、金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告カネツ商事株式会社は、東京都中央区日本橋蠣殼町一丁目一七番地に本店を置き、全国の各商品取引所において商品仲買人としての登録をなし、右清算市場における上場商品の売買取引の受託業務及び媒介委託、定期受渡し、現物取引の仲介等を目的とする資本金二億五、〇〇〇万円(昭和四三年一二月以前は二億円)の株式会社であり、被告人清水正紀は右会社の代表取締役として、その業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れるため自社商品売買損を過大に計上する等の方法により所得を秘匿したうえ、昭和三九年三月一日より昭和四〇年二月二八日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙修正損益計算書記載のとおり一億八、五六四万四、八一七円であつて、これに対する法人税額は六、二三五万三、九六〇円であつたにもかかわらず、昭和四〇年四月三〇日、同都中央区日本橋堀留二丁目五番地所在の所轄日本橋税務署において同署長に対し、所得金額は一億二、三四五万八、七五〇円でこれに対する法人税額は三、八七三万二、〇九〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額二、三六二万一、八七〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱したものである。
(証拠の標目)
(一)、全般について
一、登記官佐野直作作成の登記簿騰本四通
一、大蔵事務官宮興作成の法人税額計算書
一、浜幸之助の大蔵事務官に対する質問てん末書三通(昭和四二年三月一六日付、同年三月二〇日付、同年一二月一四日付)並びに検察官に対する供述調書三通(昭和四三年四月二二日付二通、同年四月二六日付)
一、中谷義孝の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(昭和四二年一〇月二三日付、同年一〇月二四日付、同年一〇月二五日付、同年一一月一〇日付、同年一一月一四日付、同年一一月二一日付)
一、押収にかかる委託者別先物取引勘定元帳計九冊(昭和四三年押第一、〇六八号の八、一五)、委託先物取引勘定元帳計一一冊(同号の九、一四)、損益勘定帳一綴(同号の一〇)、資産勘定帳二綴(同号の一一)、資本勘定帳一綴(同号の一二)、経理総勘定元帳三冊(同号の一三)、委託先物取引日記帳一〇綴(同号の一六)並びに法人税確定申告書計二綴(同号の二〇、二一)
一、カネツ商事株式会社取締役社長清水正紀作成の上申書一通(昭和四二年一二月二一日付)
一、被告人清水正紀の大蔵事務官に対する質問てん末書五通並びに検察官に対する供述調書五通
(二)、別紙修正損益計算書の各勘定科目のうち、
(1)、自社商品売買益並びに自社商品売買損について
一、大蔵事務官宮興作成の四〇年二月期自社玉売買損益調
一、中谷義孝作成の上申書
一、押収にかかる自社損益帳二綴(前同号の一七)
(2)、受入利息、営業費、支払利息、有価証券証価損並びに雑損失について、
一、大蔵事務官宮興作成の「営業費、受入利息、支払利息、有価証券証価損、雑損失について」と題する調査書
(3)、雑損失について
一、大蔵事務官宮興作成の値合金調
(4)、雑収入について、
一、池田真紗子作成の「出版物収入について」と題する上申書
(5)、租税公課について、
一、大蔵事務官宮興作成の「自三八・三・一至三九・二・二九事業年度分の修正申告書について」と題する書面
(法令の適用)
被告人清水正紀の判示所為は、昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条によりその改正前の法人税法第四八条第一項に該当するところ、所定刑中罰金刑を選択し、その金額の範囲内において同被告人を罰金一〇〇万円に処し、罰金不完納の際の換刑処分については、刑法第一八条第一項により金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。
被告カネツ商事株式会社については、その代表者たる被告人清水正紀が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから、昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条によりその改正前の法人税法第五一条第一項に従つて同法第四八条第一項の罰金刑を科すべきところ、本件においてはその免れた法人税額が五〇〇万円を超えるので、同条第二項を適用して罰金額を五〇〇万円を超えその免れた法人税額に相当する金額(二、三六二万一、八七〇円)以下の範囲内とし、よつてその範囲内において被告会社を罰金七〇〇万円に処する。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 近藤暁)
別紙
修正損益計算書
カネツ商事株式会社
自 昭和39年3月1日
至 昭和40年2月28日
<省略>
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